「じゅうごっていちごとも読めるんだよ

な」

「……うん?」


 デザートとして出された苺を見てウノがそう言う。漢字ならともかく、カタカナやひらがなに他の読み方は無かったはず。日本語の読み書きが苦手だといってもそのくらいはウノだって知ってるはずだ。


「ほら、1と5でいちご。これとおんなじ読み方」


 数字の話だったらしい。赤くツヤツヤと光を反射する小さな果実を一粒手に取り見つめてみる。ロックは早々にシロに追加のデザートをねだりに行った。きっとシロは喜んで腕を振るい、出されるのは苺を使ったケーキかなにかだろう。


「でもジューゴ君は苺って感じはないよね」


 ベリー系かなぁとは思うけどと、ニコが果物の名を上げていく。

 赤くて艶のある、小さな甘酸っぱい果実。


「そうか?結構似てると思うぜ?」


 ウノが母の上でチューブを握る。白いとろりとした液体が艶のある赤を伝っていく。さっぱりとした甘さに喉に残る甘さを纏わせた苺をウノは一粒摘み、練乳を舌で掬いながら柔い果実に歯を立てる。唇を落とし、舌を這わせ、歯を立てる。一連の仕草に昨晩の余韻が残る身体が共鳴する。

 頭を振り昨日の記憶を振り払い、ジューゴも目の前の果実に齧り付く。シンプルな甘酸っぱさが喉を滑った。やっぱり似ていない。


「苺の花言葉ってさ、尊重と愛情、無邪気、乙女心、なんてそういう純粋なのもあるのにさ」


 ウノの目がジューゴを見つめる。


「甘い香り、誘惑、なんてのもあるんだ」


 ジューゴを見つめながら二粒目を口に運ぶ。舌で物い切れずウノの手を伝った練乳をちゅっと舐め取りながら呟く。


「あなたは私を悦ばせる」


 いくら鈍いジューゴでもわかる。悦ばせる。赤くなった顔を隠すように俯き、苺を口に運ぶ。


「お前わざとだろ…」

「なにがー?」


 さっきまでの妖しい空気を瞬時に消し去りケラケラと笑いながら苺を食べ続けるウノ。ウノと違って切り替えが即座にできないジューゴは、ほんのり灯った火を宥めすかしていた。これから苺見るたびに思い出したらどうしてくれるんだ。

 それにーとウノが続ける。


「ジューゴも食べると止まんなくなるもん」

「ゴフッ」








25(ウノ君もジューゴ君もここ食堂なの分かってるのかな……)